前年度までの研究結果より、4He/Xe混合ガスのシンチレーション特性(発光スペクトル、発光時間プロファイル、絶対蛍光効率)は以下のような特徴を持つことが分かった。発光スペクトルを測定すると、174nm付近にピークを持つ発光であること。174nm付近のシンチレーションに着目すると、シンチレーションの立ち上がり時間は4nsec.以下であり、タイミング信号として優れていること。また、測定したシンチレーション光の減衰は、ヘリウムの励起2原子分子の発光寿命(10usec.)より早く、1%のキセノンの分圧比でキセノン励起2原子分子の寿命(99nsec.)に近づく。これはヘリウムからキセノンへのエネルギー移行過程の時間がキセノン励起2原子分子の寿命より十分短い時間に起きたためであり、He/Xe混合ガスを利用することにより、時間分解能に優れ、許容計数率が大きいといった優れた特性を持つ放射線検出器を開発できるということ、である。以上の特性から、He/Xe混合ガスのシンチレーションは中性子検出器として有望であることが分かり、中性子検出器への応用として、2次元中性子検出器を構築した。 検出器部はガスを封入し、光検出器であるマイクロチャンネルプレート光電子増倍管(MCP-PMT)を内蔵するチェンバーからなる。 MCP-PMTは位置敏感型PMT用モジュール(プリアンプ・波形成形器・ADCが一体となったモジュール)に接続され、チャンネル毎の波高値がデジタル値として出力される。中性子検出イベント毎のデジタル値はVMEデータプロセッサにより、VMEクレートコントローラを介し、PCに保存される。
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