水素吸蔵合金(LaNi_5)層への水素の吸蔵・放出過程において、層内で一次元的に熱物質移動が生じる系を対象に、層の膨張・収縮量と吸蔵・放出量の関係を実験により計測して明らかにした。また、層温度に及ぼす影響を検討した。 層体積は、吸蔵時に初期充てん状態(吸蔵量が0)から約11%膨張するが、放出時には2%程度しか収縮しない。つまり、元の体積まで戻らないことが分かった。しかし、吸蔵・放出回数を増やすと、層の体積は各サイクルの吸蔵開始から1%程度膨張し、その後、1%程度の収縮を繰り返す。つまり、割合は小さいが各サイクルで膨張収縮を繰り返すことが分かった。このことにより、層内の熱物質移動予測モデル作成において、層内の変位は吸蔵時に最大1%であることを考慮すること、層内の伝熱抵抗に及ぼす変位量の影響が小さくなるような比較的に層厚さが薄い場合には、この変位量は無視できることが分かった。 一般にLaNi_5合金粒子の体積は吸蔵時に25%膨張するが、層の体積は1%程度の膨張収縮率であることから、吸蔵・放出にともなう層内の空隙率(層の見かけの体積あたりの粒子以外の空間体積の比率)は、吸蔵開始時に0.6程度から吸蔵終了時に0.5程度まで変化することが分かった。空隙率は層の有効熱伝導率に大きく影響を及ぼすことが知られている。空隙率変化を無視して有効熱伝導率を推算すると約20%も過小評価することが分かった。したがって、層内の熱物質移動予測モデルには、膨張収縮にともない変化する空隙率に基づいて推算した有効熱伝導率を用いることが重要である。 また、膨張率は水素吸蔵量に比例して増加することや、膨張収縮率に及ぼす層の温度依存性はないことも分かった。
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