減数分裂期におけるRad9-Rad53経路の抑制機構とその生物学的意義を理解する目的で研究を行った。課題A-1とA-2では、Rad9の減数分裂期のDNA二重鎖切断(DSB)部位への局在を調べた。Rad9-HAあるいはRad9-YFP融合蛋白を発現する株で、それぞれ染色体免疫沈降と蛍光蛋白局在観察により検討したが、Rad9のDSB部位への結合は観察されなかった。従って、可能性(X)、すなわち減数分裂期にはRad9がDSB部位に局在する事を阻害する因子のあることが示唆された。課題A-3では、Rad9結合蛋白として単離されたp150が、mass spec解析によりSum1であることを明らかにした。Sum1は、減数分裂期中期に誘導される遺伝子群の転写抑制因子であり、減数分裂期特異的な転写活性因子であるNdt80が活性化される時期に不活化される。興味深いことに、Ndt80が活性化されるとRad53活性化の抑制が解除される結果を得つつあり、Sum1の不活化時期と一致することから、Sum1がRad9のDSB局在阻害因子である可能性が考えられる。今後、Sum1とRad9の相互作用の詳細な解析やsum1Δ変異株の解析を行う。課題B-1では、Rad53を減数分裂期特異的DMC1プロモーター下に配置して過剰発現することによって、減数分裂期にRad53を強制的に活性化する系を構築できた。その結果、胞子生存率の低下、減数分裂期細胞周期の遅延が観察された。従ってRad53の活性化の抑制は、減数分裂期の進行に重要である事が示唆された。さらに細胞周期の遅延は、DSBの存在に依存することから、Rad53がDSB形成後の組換え過程に影響を与えることが示唆された。今後、仮説の直接検討となるRad53が姉妹染色体間組換えを促進する可能性をDSBの状態、組換え体の解析により調べる。
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