分裂酵母の接合型変換は、ゲノム上のmat座位において高度に制御された相同組換えにより起こるが、詳しいメカニズムは不明である。これまでの遺伝学的な知見から、Swi2-Swi5複合体は、mat領域の直近にあるSRE領域に局在し、相同組換えによる遺伝子変換反応に直接に関わる因子であると考えられている。本研究は、試験管内再構成系を構築して、接合型変換におけるSwi2-Swi5複合体の機能を解明することを目的とした。まず、タンパク質発現条件と精製法の確立を図ることからスタートし、様々な改良によって最終的に、Swi2-Swi5複合体の全長タンパク質の精製に成功した。この精製したSwi2-Swi5複合体標品を用いて、組換えに関連する活性について、試験管内反応系を用いて生化学的に様々な活性を検討した。その結果、Swi2-Swi5複合体は、ATP非依存的なD-loop形成活性を有することを発見した。N末端が短縮したSwi2(381-722アミノ酸)とのSwi5複合体も、この反応を触媒したので、活性中心はC末端に存在すると考えられた。また、このD-loop形成反応は、mat領域のSRE配列を含むDNAを基質に用いた時の方が、それ以外の非特異的配列で行った場合よりも、高い反応効率を示した。これらの解析結果は、Swi2-Swi5が、接合型変換時の相同組換えにおいて、初期反応である単鎖DNA侵入反応を直接触媒する可能性を強く示唆するものである。以上、本研究における当初目的は十分に達成できたものと判断される。
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