研究課題
社会的一夫一妻の社会形態をとる鳥種では、つがい以外の個体との間に子をもうけるつがい外配偶行動が知られている。つがい外配偶行動という現象は、1)個体レベルの行動と、2)時空間的繁殖分布などの個体群パラメーターの両方から影響を受ける。ところが、これまでの研究は、そのいずれかの側面からのみに着目していた。そこで本研究は、ツバメ(Hirondo rustica)を対象に両者を統合的に扱うことを目的とした。昨年度に引き続き、千葉県富津市に形成されたコロニーで繁殖を行ったツバメを対象に研究を行った。昨年度までは個体レベルの行動の調査に重点をおいたため、本年度は個体群パラメーターとつがい外配偶行動の関係に重点を置いた調査を行った。つがい外配偶行動は繁殖密度や繁殖同調性の度合いによって変化するため、コロニー内の巣を見回り、繁殖をしている巣の場所と進行具合を経時的に記録した。コロニー内のつがい外配偶の実態を調べるために、繁殖に関わった全ての親子の血液からDNAを抽出し、マイクロサテライト部位を用いた父性鑑定を行った。繁殖の同調が起こる機構を理解するためには繁殖生理に関する知見を得ることが重要となる。そこで、体内の性ホルモンの変化を調べた。巣の真下にトラップを設置し、夜間につがいごとに糞をサンプリングした。採取した糞から、放射免疫測定法(RIA)を用いて糞中のテストステロンとコルチコステロンの濃度を測定した。これ与のホルモン濃度と昨年まで得られた結果の比較。本年度の結果から、(1)2つがいからホルモンを採取し、変動を調べたところ、受精期前に高いレベルを示していたテストステロンレベルが、初卵日の数日前をピークに減少することが明らかとなった。(2)個体単位の行動との比較から、テストステロンレベルが配偶者防衛行動などの行動と関連することが示唆された。
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