研究概要 |
本研究では,メタン菌におけるシグナル伝達部位および伝達機構について詳細を明らかにすることを目的とする.さらに共生細菌からメタン菌へのシグナル伝達の起因と考えられるナノワイヤーを介した電子の移動を確認するため,微生物燃料電池システムを用いて2種微生物間の電子移動を確認するとともに,ナノワイヤーの導電性材料としての興味から特異な電子伝達機構の分子構造解明を目指す. 昨年度の実験の結果,メタン菌の細胞壁にあると予想されるレセプタータンパクの検出を試みたが,予想に反しレセプター絶対量が少なく検出は困難であった.そこで今年度はメタン菌の大量培養を試み,膜タンパクの精製を行いレセプターの特定を目指す.またメタン菌が生きたままの状態で,レセプタータンパクを特異的に染色させる方法を開発し,タンパク量をリアルタイムで追い,共生関係構築との関係を考察することを目標とした. 22年度は,共生関係を築き,シグナル伝達の存在が証明されているメタン菌と共生細菌の間で,シグナル物質受容体があると考えられるメタン菌細胞壁を分画し,そこに存在するタンパク質の精製を試みた.シグナル伝達物質である共生細菌の鞭毛を標識し,メタン菌の細胞膜と混合し,相互作用した膜タンパクの検出を行ったところ,バックグラウンドと有意に差がある相互作用タンパク質を検出した.この結果によって,メタン菌細胞表面にシグナル受容体が存在することがある程度推測され,これらのタンパク質とメタン菌内の他の遺伝子の発現変動の追跡を行うことによって,シグナル伝達機能の解明が期待される.このタンパク質は粗精製タンパクであるため,今後はタンパク質の精製を行い,受容体タンパクの特定と力学的性質の決定を試みる.
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