2009年度は、持続可能な生態系のための制度や規範に関する、以下の2つの理論的な研究を行った。 (1) 生態系の持続的利用のために人は様々な慣習・制度を作り上げてきた。メンバーによって生態系維持のための仕事(協力行動)を一緒に行う必要があるが、一人のメンバーしかその生態糸を利用出来ない場合には、輪番で利用するシステムを作り上げている。始めに利用した後に、生態系維持のための仕事(協力)をしない人(フリーライダー)は一番利益が高くなる。制度維持のためにはフリーライダーを防ぐためのルールやシステムが必要となる。そこで、研究代表者らは、世界中に存在している互助慣習である、頼母子講に着目した。頼母子講の様なシステムは生態管理のための制度と非常に似ているので、生態系管理のための制度研究にも繋がるのである。講におけるフリーライダーを防ぐためのメカニズムを、進化シミュレーションによって探った。すると、講集団に入れるメンバーを評判によって決めるという意思決定だけではなく、制度的ルールがあって、講というシステムが維持される事を示した。この研究は学会等で発表を行い、2009年度中に国際雑誌にて論文が出版された。 (2) 公共財ゲームは生態系保全や地球温暖化などの問題でよく使われているゲームである。公共財ゲームにおいて、フリーライダー(つまり、保全のための活動に協力しない人)を防ぐための一つの方法として、フリーライダーへの罰がある。研究代表者らは、相手の協力度合いによって罰の強度を変化させることが出来る状況を仮定して、どの様な罰を与えるのがよいか、検討した。すると、身近な相手と公共財ゲームを行う場合は、厳格な罰によって協力度合いが高くなる。が、ゲームをする相手をランダムに選ぶ場合は、漸進的な罰を与えると協力度合いが上がる事を示した。この研究は、学会等で発表を行い、来年度に投稿予定である。
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