親の子への投資の進化は進化生態・行動生態学の中心課題の一つである。特にどちらの性が育児を担当すべきかは重要な命題で、雌雄双方が育児に参加するには複雑な条件が必要となるとされている。現在1)直前の相手の投資量から現在の自分の投資量を決める、2)相手の投資量にかかわらず、最初に決めた分だけ投資する、の二つの説が有力である。ヨツボシモンシデムシはネズミなどの小型脊椎動物の死体を地中に埋葬し、雌雄で幼虫に口移しで餌を与えるなどの世話をする。片親を取り除いた場合、残った個体が給餌回数を増やすことで対応することから1)の説が当てはまると考えられてきた。 しかしSuzuki & Nagano(2008)はオスの給餌回数はメスに重りを付けて行動を制限しても増えないことから、直前のメスの行動とは無関係と仮定した。昨年、メスへの重り付の時期を変えて行ったところ、幼虫のふ化前に行った場合はいずれもオスの給餌回数が増加した。これは幼虫のふ化後に重りを取り除くことでメスの行動制限を無くしても継続したことから、オスの給餌回数はかなり早い段階のメスの行動によって決まる可能性を示唆する。本内容は日本昆虫学会第69回大会で発表済みで、現在投稿準備中である。 また、雌雄が協力して幼虫を防衛する効果についても調べた。オス親の存在は死体の埋葬速度やメスの労働量を変化させないが、同種個体が侵入してきた場合産卵前はオス同士メス同士で争うのに対し、産卵後はどちらの性でもオスが高頻度で防衛に参加した。
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