研究概要 |
親の子への投資の進化は進化生態・行動生態学の中心課題の一つである。特にどちらの性が育児を担当すべきかは重要な命題で、雌雄双方が育児に参加するには複雑な条件が必要となるとされている。ヨツボシモンシデムシはネズミなどの小型脊椎動物の死体を地中に埋葬し、雌雄で幼虫に口移しで餌を与えるなどの世話をする。オスが協力することの最大の利益は,外敵の排除,特に同じモンシデムシによる侵入,子殺しへの対処がしやすくなる点にありそうだ.モンシデムシは侵入者を雌雄協力して追い払うため,オスがいることで乗っ取られる可能性を低くできる.この場合、オスが育児に参加する意義は限定的であるため、オスの役割を定量化することは雌雄双方が育児に参加する複雑な条件を推定するのに重要な役割を果たす。 そこで前年度は、オスによる外敵の排除、特に同種のメスに対する行動の調査を行った。産卵後の雌雄ペアの巣に、より大型のオスまたはメス1個体を導入し、攻撃行動とその結果を観察した。侵入者がどちらの性であっても雌雄双方が同程度攻撃を加え、約半数が防衛に成功した。死体を埋葬する前は同性間でのみ争うこと、大型個体がほぼ確実に勝つことを考えると、オスの存在は防衛の効果を上げているといえる。オスにとっては侵入メスとつがうという選択肢があるにもかかわらず、先住メスがみせるよりもむしろ激しい攻撃を行った。また、それ以外にオスの存在によって死体が発見される率が変わる可能性、死体の埋葬がより迅速になる可能性についても検証を行ったが、どちらも否定された。
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