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2009 年度 実績報告書

キスゲ属植物における送粉シンドロームの平行進化:交雑による遺伝子浸透仮説の検証

研究課題

研究課題/領域番号 21770025
研究機関九州大学

研究代表者

安元 暁子  九州大学, 理学研究院, 学術研究員 (10516751)

キーワード種分化 / キスゲ属 / 雑種形成 / 遺伝子浸透 / 送粉シンドローム / 平行進化 / 葉緑体DNAと核DNAの系統 / 浸透性交雑
研究概要

キスゲ科キスゲ属は、蛾へ適応した薄黄色で甘い香を持つ夜咲きの花を咲かす蛾媒花種と、赤く香がなく朝咲き花を咲かす蝶媒花種からなる。キスゲ属では蛾媒花種が平行進化、つまり花色、花香、開花時間の3形質が揃って平行進化したとされている。蛾媒花の平行進化の原因を探る一環として、本年度は日本全国の29箇所でサンプリングと花形質の調査を中心に行った。集団間の葉緑体DNA系統樹については、外群の問題を残したもののほぼ完成した。サンプリングの際に花が咲いていた場合は、デジタルカメラのインターバル撮影機能を利用して、花形質(主に開花時間・閉花時間)を調べ、ポリネーターの観察も行った。開花時間の詳細が分かっていなかったニッコウキスゲでは、花寿命が朝咲き朝閉じの約24時間であること、エゾカンゾウでは、花寿命が朝咲き朝閉じの約48時間であることが分かった。また、この2種にはマルハナバチの訪花が頻繁に観察され、チョウやガの訪花も観察された。この2種の葯と柱頭間の距離は蛾媒花や蝶媒花に比べて短く、また、蜜を溜める花筒も蛾媒花や蝶媒花に比べて非常に短く、主な送粉者はマルハナバチであると考えられた。外群としたキキョウランの配列の一部が領域内で重複を起こしておりキスゲ属とのアラインメントが難しいために、外群の位置が確定していない。日本国内のキスゲ属は、西日本と東日本で大きく2つのグループにまとまった。西日本のグループでは蛾媒花と蝶媒花が見られた。東日本のグループではハナバチ媒花と蛾媒花と蝶媒花が見られた。また3倍体種ヤブカンゾウは遺伝的変異がほとんどなく、九州・本州に広く分布するにも関わらず、東日本グループの中で1つのまとまりを形成した。比較的最近に人の手によって、日本全国に広がった可能性が高い。今後は核DNAを解析し、遺伝子浸透が多系統の原因となったかどうかの詳細を明らかにしていく予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Variation of flower opening and closing times in F1 and F2 hybrids of daylily (Hemerocallis fulva) and nightlily (H.citrina)2010

    • 著者名/発表者名
      Kozue nitta, et al.
    • 雑誌名

      American Journal of Botany 97

      ページ: 261-267

    • 査読あり
  • [学会発表] The differentiation in pattern of pollen tube elongation between Hemerocallis citrina, H.fulva and hybridization2010

    • 著者名/発表者名
      Akiko Yasumoto, et al.
    • 学会等名
      University Research Priority Program Retreat 2010
    • 発表場所
      Ascona, Switzerland
    • 年月日
      20100301-20100302
  • [学会発表] キスゲとハマカンゾウの花色の違いの遺伝的背景2010

    • 著者名/発表者名
      新田梢, 他
    • 学会等名
      第57回日本生態学大会
    • 発表場所
      駒場、東京
    • 年月日
      2010-03-17
  • [学会発表] アゲハとスズメガによる花色・花香の選択:花粉一粒PCRを用いた実測2010

    • 著者名/発表者名
      廣田峻, 他
    • 学会等名
      第57回日本生態学会大会
    • 発表場所
      駒場、東京
    • 年月日
      2010-03-16
  • [学会発表] キスゲとハマカンゾウの花色の違いの遺伝的背景:雑種の表現型と色素合成系遺伝子の解析2009

    • 著者名/発表者名
      新田梢、坂口祐美、三島美佐子、小関良宏、安元暁子、矢原徹一
    • 学会等名
      第73回日本植物学会
    • 発表場所
      小白川、山形
    • 年月日
      20090918-20090920
  • [学会発表] 隔離要因としての開花時間の理論的解析2009

    • 著者名/発表者名
      松本知高, 他
    • 学会等名
      第11回日本進化学会大会
    • 発表場所
      札幌、北海道
    • 年月日
      20090902-20090904
  • [学会発表] 花色の違いの遺伝的背景を探る:キスゲとハマカンゾウにおける雑種の表現型と色素合成系遺伝子の解析2009

    • 著者名/発表者名
      新田梢、坂口祐美、三島美佐子、小関良宏、安元暁子、矢原徹一
    • 学会等名
      第41回種生物シンポジウム
    • 発表場所
      八王子、東京
    • 年月日
      2009-12-12
  • [学会発表] アゲハ類・スズメガ類による花形質への選択:花粉一粒PCRに基づいた送粉成功の評価2009

    • 著者名/発表者名
      廣田峻, 新田梢, 陶山佳久, 川窪伸光, 安元暁子, 矢原徹一
    • 学会等名
      第41回種生物シンポジウム
    • 発表場所
      八王子、東京
    • 年月日
      2009-12-12

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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