年間300件近く報告されている日本沿岸に漂着する海棲哺乳類について、HABs(大量発生有害藻類、赤潮と呼ばれることもある)による藻類毒への暴露状況を、病理学ならびに化学分析学手法を用いてスクリーニングし明らかにすることを目的とし、解析を実施した。国立科学博物館にすでに収蔵されている、または当該年度に全国各地で漂着した鯨類の血液サンプルを用いドウモイ酸、ブレビトキシン、サキシトキシンについて、E1ISA kitを用い解析を行った結果、集団座礁および単独座礁あわせた40個体のうち、30個体についてブレビトキシンとサキシトキシンの陽性反応を確認した。これは国内初の結果である。病理学的所見は現在精査中である。さらに、どのサンプルを選択するかという問題があったが、当該年度の結果から、血液に加え、尿、糞便および胃内容物もサンプルとして用いることが結果への信頼度が増すことが明らかとなったことも大きな成果であった。さらに、ELISA kitより感度の高いHPLC(高速液体クロマトグラフィー、機種名;Detector : RF-10AXL、Column Oven : CTO-10AC、Pump : LC-20AB;島津製作所)を愛媛大学沿岸環境研究センターの協力により無償で使用することが実現し、結果への信頼度がさらに増した。
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