研究課題
琵琶湖産魚類の標本試料を用いて、琵琶湖の富栄養化と魚類の食性変化、栄養段階の変化について研究を行った。この結果、琵琶湖ハゼ科魚類イサザではアミノ酸の化合物レベル窒素安定同位体比手法による栄養段階の算出結果には、ほとんど変化が見られないことが明らかとなった。イサザについては琵琶湖の富栄養化後、胃内容物に明らかな生物相変化が観測されているが、本研究の結果は食性の見かけ上の変化が必ずしも栄養段階の変化にはつながらないことを示唆した。これは全窒素安定同位体比測定による従来手法を用いた研究結果とも一致している。ロシアバイカル湖では、バイカルアザラシ、浮遊性カジカ4種、コレゴヌス、その他浮遊性の動物プランクトン等について、アミノ酸安定同位体比測定を行い、この湖における生態系構造の再解析を行った。この結果バイカル湖において栄養段階最上位に位置するバイカルアザラシは栄養段階5を示し、カジカ類より上位に位置することを確かめた。バイカルアザラシでは、全窒素安定同位体比により推察された栄養段階が、行動観測から予測されるよりも低いことが報告されている。本研究の結果、採餌範囲の広い高い高次消費者では、餌生物における全窒素同位体値の幅の広さが、栄養段階算出の際の過小評価につながっていることが推察された。同様の事項は、本研究の中で相模湾周辺におけるイワシ類における研究結果においても観測されており、アミノ酸手法による援用段階推定が、生態系のなかで高次消費者の栄養段階推定においても優れた威力を示すことを明確に示す成果となった。
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Earth, Life, and Isotopes
ページ: 263-279
ページ: 339-353
http://www.jamstec.go.jp/biogeos/j/elhrp/biogeochem/