研究概要 |
植物における低温シグナル伝達因子ICE1と相互作用するタンパク質であるカルモジュリン様タンパク質の機能解析を行った。カルモジュリン様タンパク質の過剰発現体では低温耐性を示し、RNAiによる発現抑制体では低温感受性を示した。また、これらの植物体において、低温誘導性遺伝子(CBF/DのREB1,COR47,P5CS2)の発現解析を行ったところ、過剰発現体ではこれらの遺伝子の発現が上昇し、RNAi抑制体では発現の低下が見られた。これらのことから、カルモジュリン様タンパク質が低温シグナル調節及び低温応答に関わっていることが示唆された。シロイヌナズナにおいてカルモジュリンタンパク質は7種類、カルモジュリン様タンパク質は50種類存在する。今回単離されたカルモジュリン様タンパク質はグループ2に属するが、グループ2内の他のカルモジュリン様タンパク質及び、近縁のグループ1およびカルモジュリンに対する相互作用を調べたが、ICE1との相互作用は見られなかった。このことから、今回単離したカルモジュリン様タンパク質は特異的にICE1と相互作用する可能性が考えられる。このことは、低温における細胞質、核中へのカルシウムの一過的放出をデコードする因子としてカルモジュリン様タンパク質が働き、そのシグナルをICE1から始まる低温シグナル伝達経路に伝えている可能性が示唆された。尚、低温におけるカルシウムの一過的放出を司る因子としてカルシウムチャネルが考えられ、予備的実験では、カルシウムチャネルの変異株において、低温応答に異常が見られることが明らかとなった。
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