研究概要 |
申請者がこれまでに構築してきたシロイヌナズナの共発現データベースATTED-IIは、未知の機能グループを推察する手段として広く利用されてきた。しかしこの遺伝子共発現情報は遺伝子間の機能的関係の存在を支持するものの、それが具体的にどのような関係なのかについての情報をもたらさない。平成21年度は、この共発現の関係性に寄与している生物学的背景を判断する為の、共発現成分を評価するパイプラインの構築ならびにそれを用いた各種成分の遺伝子共発現データを作成した。平成22年度はこの各種成分の共発現データを一度に参照できる2タイプのビューアをATTED-II上に構築した。一つは値を直接比較するビューア(共発現リストツール、EdgeAnnotationツール)でもう一つは共発現の構造を比較するビューア(NetworkDrawerツール)である。どちらの場合にも、共発現データの直接比較するために、申請者のこれまでの研究に基づく独自の共発現指標MR (Obayashi and Kinoshita, 2009, DNA Res)を用い、「共発現の具体的な関係」の提示という当初目標は達成された。 またこの成果に基づき共発現を導入する共通の転写因子の予測方法の研究も進めたが、予測の擬陽性が高くデータベースへの実装には至っていない。擬陽性が高くなる一つの可能性として、共発現データの不確実性が考えられたため、データの信頼性を向上される目的で、複数種の共発現データを比較するアプローチを試みており、中間的なデータではあるが擬陽性率を改善できる見込みである。種の比較は様々な植物への共発現データの利用の観点からも重要であることから、値を比較するビューアを開発し、ATTED-IIに実装した。 これらの「共発現の具体的な関係」を提示するATTED-IIについて、Plant and Cell Physiology誌で発表した。
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