花粉管ガイダンスは、植物の生殖や穀物の生産を支える重要な機構である。本研究では、in vitro花粉管ガイダンス実験系のモデル植物Torenia fournieriを用いて明らかになりつつある花粉管ガイダンス因子の知見をふまえ、その分子が野生の植物種ではどのような分子進化を遂げ機能しているか、明らかにすることを目指した。 昨年度までに、近年当研究室の研究により明らかとなった、Torenia fournieriにおける花粉管ガイダンス因子TfCRP1のオーソログ遺伝子をこれらの近縁植物から単離することに成功している。CRP1は同種の花粉管に対して強い誘引活性を示すことが示唆されたが、CRP1タンパク質のどのような構造によりこのような種特異性がみられるのか明らかにするため、NMRを用いたタンパク質の立体構造の決定を試みた。15Nで標識したリコンビナントTfCRP1タンパク質に花粉管誘引活性があることを確認した後、1H-15N HSQCにより解析したところ、TfCRP1のアミノ算数とほぼ同じ数のシグナルが認められた。現在はさらに13Cで標識するためにタンパク質の発現条件等を検討している。 また、TfCRP1は100μm程度の短距離でしか働かないが、花粉管は雌しべ内部を数mmにもわたり伸長する。In vitroアッセイより、成熟胚珠に花粉管の伸長を促進する活性があることを明らかにした。胚珠培養液を熱処理してもこの活性は失われなかったため、CRP1とは異なる新規の因子であると考えられた。現在、生理活性を元にしたこの因子の同定を目指している。
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