植物の主要な光受容体であるフィトクロム蛋白質は、発色団を結合するN末端領域とキナーゼドメインを持つC末端領域からなる。主に構造的な特徴から、フィトクロムはC末端領域内のキナーゼ活性により下流にシグナルを伝達すると、これまで長い間信じられてきた。しかし我々の最近の研究によりその「常識」が覆され、フィトクロムの最も主要な分子種であるphyBが、C末端領域からではなくN末端領域からシグナルを発信することが証明された。この発見により、フィトクロムのシグナル伝達機構を一から見直す必要が生じた。そこで本研究では、現在全く未知であるphyBN末端領域からの光シグナル伝達機構を分子レベルで明らかにするために、phyBN末端領域から発せられたシグナルを直接受け取る相手因子を同定する。 これまでに作製したcry1cry2二重変異体背景のアクティベーションタギング系統約25万系統を用いて、phyB経路特異的な光応答低下を示す変異体のスクリーニングを、本年度完了した。その結果、T2世代において白色光条件で胚軸徒長を示す独立な変異体599系統の中から、赤色光条件特異的に胚軸徒長を示し、かっ正常なphyB蛋白質蓄積量を示す系統を、合計で42系統選抜した。そしてこれら42系統のそれぞれについて、TAIL-PCR法を用いてT-DNAの挿入位置を決定し、原因遺伝子候補を同定した。さらにこれらの中で特に興味深い1つの遺伝子に関しては、原因遺伝子の確認と機能解析を進めた。
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