研究概要 |
受粉後の花粉細胞は,花粉管を胚珠に向かって一方向に先端生長させる.この花粉管の先端生長において活性酸素種(ROS)が重要な役割を担っている.花粉管先端でのROS生成にはNADPH oxidaseをコードするrboh遺伝子が関与している.本研究では,花粉管先端生長のメカニズムを解明することを目的に,シロイヌナズナの花粉管先端でのROS生成を担うと推測されるAtrbohH,AtrbohJの機能解析をおこなう.本年度の研究により次のことを明らかにした. 1. ヒト培養細胞HEK293T細胞を用いた異種発現解析により,AtrbohH,AtrbohJは共にROS生成能を持つことを明らかにした.また,AtrbohH,AtrbohJは,Ca^<2+>イオノフォアであるイオノマイシンによって活性化されるが,EF-hand motifに変異を導入するとこの活性化が観察されないことから,EF-hand motifへのCa^<2+>結合により活性化されることを示唆した.さらに,脱リン酸化阻害剤であるカリクリンAにより活性化されること,イオノマイシンとカリクリンAの両者によって相乗的に活性化されることも明らかにした. 2. プロモーターGUS解析・RT-PCRによる組織特異的発現解析により,AtrbohH,AtrbohJ遺伝子は花粉特異的に発現していることを明らかにした. 3.atrbohH,atrbohJ突然変異体を単離したが,顕著な表現型異常は観察されなかった.このことから,AtrbohH,AtrbohJ遺伝子は冗長的に機能していることが示唆された.次年度,atrbohH;atrbohJ二重突然変異体を作出し,表現型を観察する予定である.
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