研究概要 |
花粉管の先端生長には,活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)が重要な役割を担っている.シロイヌナズナには,ROS生成を担うNADPH oxidaseをコードする遺伝子としてAtRbohがある.AtRboh遺伝子はゲノム上に10種存在する.本研究では,花粉管先端生長におけるAtRbohH,AtRbohJ遺伝子の機能解析をおこなってきた.本年度,下記の点について明らかにした. 1.atrbohH,atrbohJ二重突然変異体の表現型解析: 昨年度atrbohH,atrbohJ各単独突然変異体を単離したが,顕著な表現型異常は観察されなかった.本年度,atrbohH;atrbohJ二重突然変異体を作出し,表現型解析をおこなった.二重突然変異体でも,顕著な形態異常は見られなかったが,稔性低下の異常が見られた.二重突然変異体の花粉を野生型の雌しべに掛けあわせても,同様の稔性異常が見られた.アニリンブルー染色により花粉管を観察したところ,花粉管の伸長に異常が見られた.これらのことから,AtrbohH,AtrbohJ遺伝子は,花粉管の先端生長において冗長的に機能していることを明らかにした. 2.HEK293T細胞を用いた異種共発現系解析によるAtRbohH,AtRbohJの活性化制御機構の解析 分子スイッチとして機能するsmall GTPaseのROPが,花粉管の先端生長において機能していることが示されている.そこで,ROPとAtrbohHあるいはAtrbohJの異種共発現解析をおこなった.その結果,ROP3,ROP11がAtRbohHとAtRbohJの活性化制御に関与することを明らかにした. これらの結果より,ROS生成を介したAtRbohH,AtRbohJ遺伝子による花粉管先端生長のメカニズムの一端が明らかになった.
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