研究概要 |
植物では多くの環境ストレス応答/防御関連遺伝子が選択的スプライシングにより複数の転写産物を生成しているため、植物は環境ストレスに対抗する手段の一つとして選択的スプライシング機構を独自に発達させていると考えられる。これまでにシロイヌナズナにおいて、スプライシング制御因子として主要な働きを担うセリン/アルギニンリッチタンパク質(SRタンパク質)の中で、強光ストレス応答性を示すatSR45aおよびatSR30が、環境ストレス応答/防御に関わる重要な遺伝子群の選択的スプライシング制御に機能している可能性が示唆された。 そこで本研究では、それらの生理的重要性を明らかにするために、遺伝子破壊株(KO-sr45aおよびKO-sr30)を用いたタイリングアレイ解析により、強光ストレス(800μmol/m^2/s)下でatSR45aによりスプライシング効率を制御される遺伝子の同定を試みた。その結果、KO-sr45a株では、236箇所のコーディング領域の発現量が野性株と比較して有意に変化していた。それら領域の近傍には代謝(28.2%)やシグナル伝達(10.6%)、タンパク質ターンオーバー(9.3%)、転写因子(6.6%)、生育発達(6.2%)、輸送(4.8%)およびRNA結合因子(3.5%)に関連する遺伝子群が含まれていた。一方、KO-sr30株では、230箇所のコーディング領域の発現量が有意に変化しており、タンパク質ターンオーバー(21%)、転写因子(15%)、シグナル伝達(30%)に関連する遺伝子が多数存在した。半定量的RT-PCRによる検証およびシークエンス解析の結果から、atSR45aはイントロンリテンション型の、atSR30はカセットエキソン型および選択的3',5'スプライス部位型スプライシングエンハンサーとして機能していることが示唆された。
|