研究概要 |
シロイヌナズナの幼植物体の表皮細胞に細長い小胞体由来のオルガネラが出来ることを発見し,ERボディと名付けた.ERボディは成長した植物では消失するが,傷害により再び誘導されることから,虫害や病害に対する防御のためのオルガネラであると考えられている.転写制御因子であるNAI1,ERボディに局在するNAI2,ERボディの主要成分であるβグルコシダーゼ,PYK10がERボディ形成に必要であることを明らかにしてきたが,ERボディの膜タンパク質については不明であった.そこで,本年度ではERボディの膜タンパク質について解析を行った.データベースを用いた共発現解析により,PYK10やNAI2遺伝子と発現パターンがよく一致し,膜貫通ドメインをもつタンパク質をコードする遺伝子,Membrane of ER body 1(MEB1),MEB2を見いだした.nai1変異体を用いた解析から,MEB1とMEB2の発現はNAI1に制御されていることが明らかとなった.抗体や蛍光タンパク質との融合タンパク質を用いた局在解析から,MEB1,MEB2はERボディの膜に局在することが明らかになった.このことから,MEB1とMEB2はERボディの膜成分であることがわかった.meb1 meb2二重変異体では,野生株と同様にERボディが形成されていた.このことから,MEB1およびMEB2はERボディの形成には必要ではないことが明らかとなった.nai2変異体ではMEB1,MEB2は小胞体ネットワークに分散して局在した.ERボディの成分であるPYK10とNAI2を,ERボディを形成しないタマネギに共発現させることにより,ERボディを形成させることができる.PYK10,NAI2と同時にMEB2を発現させたところ,MEB2は人工的に形成されたERボディに局在した.このことから,NAI2により形成されたERボディにMEB1とMEB2が局在することで機能的なERボディの膜が形成されることが示唆された.
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