グルタチオン分解酵素γグルタミルサイクロトランスフェラーゼの同定を目指し、精製を行った。活性が高いカリフラワーの花芽から抽出したタンパクを、硫酸アンモニウム分画、弱酸処理、カラムクロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換、疎水性相互作用)を用いて分画し、活性の高い画分を採取することにより、精製した。この方法で、活性を約400倍精製でき、タンパク質電気泳導において、数本のメジャーなバンドを得るまでに至った。今後は、これらバンドのアミノ酸配列決定を行う予定である。グルタチオンは有機態硫黄の貯蔵形態であり、その分解酵素を同定することは、その他の有用有機硫黄化合物の制御メカニズム理解につながる。 メタボロミクスを用いた内在性グルタチオン抱合体の同定については、植物ホルモンであるジャスモン酸の前駆体、oxophytodienoicacid(OPDA)がグルタチオン抱合体として液胞に輸送されることを明らかにした。また、その生理的意義を知るために、シロイヌナズナにおいてOPDAとグルタチオンを結合させるグルタチオントランスフェラーゼGST6の破壊株を確立し、ジャス酸類の濃度を測定した。破壊株においては、これらジャスモン酸類は変化していなかったが、GST6以外の酵素がグルタチオンとの結合を行っている可能性も考えられた。さらなる検討のために、GST6の過剰発現株の作成を開始した。過剰発現用のプラスミドを作成し、シロイヌナズナに導入した。 OPDAがグルタチオン抱合体として液胞に運ばれることが、病害応答等において重要な植物ホルモンである、ジャスモン酸類合成の制御につながっている可能性がある。
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