研究概要 |
高等植物の液胞膜上に生じるサブ領域様構造bulbの研究を,形態学と遺伝学の観点から行ない,以下の結果を得た. 1.形態学:長時間タイムラプス撮影による,bulbの形成過程 発芽の初期の過程で,bulbは非常に高頻度で出現する.このステージに着目して,長時間タイムラプス撮影することで,高精細な共焦点レーザー顕微鏡像複数枚から成る3D画像を連続的に取得した.Bulbが新たに作られる過程を連続的に追跡できる観察系として優れていることを見いだした. 2.遺伝学: bulbの機能の手がかりを得るために (1)順遺伝学: bulbや液胞膜が異常となる変異体の探索 Pro : AtVAM3 : GFP : VAM3/vam3-1を親株として得たEMS変異体プールのM2世代で,巨視的な表現型がvam3-1様になっているもの,その他にも顕著な葉の形態異常などを指標に一次スクリーニングして種を収穫した.現在,顕微鏡観察による二次スクリーニングを継続中である.そのうち,#64変異体は,液胞やbulbの形態が異常になる他,様々な組織の伸長阻害,不捻,などが観察された.バッククロスと原因遺伝子の特定に向けマッピングの準備を進行した. (2)逆遺伝学: bulbや液胞膜への関与が類推されるもの PSCの吉本光希博士から分与してもらったオートファジー(自食)の変異体(atg2,atg5)と,bulbのマーカーラインであるPro : AtVAM3 : GFP : VAM3/vam3-1で交配を行い,atg変異をホモに持つF3種子を得た.F3種子から育てた幼植物を観察したところ,atg2,atg5ともにbulbは観察され,オートファジーはbulb形成のメインの経路ではないことが示唆された.しかし,詳細な定量解析により,これらの変異体でbulbの数はおよそ半減していることが明らかとなった.これらの結果から,bulb形成過程はオートファジー依存/独立の二つの経路があることが示唆された.
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