研究概要 |
木質形成過程を制御するマスター転写因子NST1,NST3の下流で働いている転写制御因子を同定するため、NST3プロモーターで発現させたときにnst1-1 nst3-1変異体の表現型を回復させることができる因子の探索を行い、昨年度までの研究により複数のMYB型、NAC型転写因子を候補として同定した。これらの変異体や遺伝子操作を行った形質転換植物を作成したところ、MYB型転写因子の二重変異体において木質形成が不完全になり、nst1-1 nst3-1変異体に近い表現型を示すことがわかった。現在この変異体について詳細な解析を行っている。また、NAC型転写因子に関しては師部での発現が示唆され、変異体において早咲きの表現型を示すことがわかった。現在この表現型と木質繊維形成との関連性について検証中である。 また、木質形成に関与する酵素類などを直接制御する転写因子を同定するために、転写因子だけから成るライブラリーを用いて行う改良酵母ワンハイブリッド法を前々年度までに開発した。前年度は本法の改良および限界について実験的検証を進めた結果、96穴プレートを用いて、関連性が疑われる転写因子と個別に相互作用を検証していくことにより、バルクスクリーニングでは得られないような候補も同定可能であることを見出した。しかし一方で、限定した転写因子に対する個別検証では、候補が得られない場合も多かったので、本年度は全転写因子を96種類のプールに分けて全転写因子を対象にスクリーニングを行う手法を導入し、70超の木質形成関連遺伝子について、プロモーター領域に結合する転写因子のスクリーニングを行い多数の相互作用を検出した。これらには未知のものが多数含まれていたので、現在その妥当性についてインビトロ実験や植物体内での実験により検証を行っている。
|