研究課題
褐藻類の細胞質分裂は、ほかの真核生物で報告されている「細胞膜の収縮」や「細胞板の形成」とは異なる様式で進行していることが明らかになっている。褐藻類の細胞質分裂には、平板小嚢とゴルジ体由来小胞という2種類の膜構造が関与している。平板小嚢とは直径が約500nm、高さが20nmの褐藻類の細胞質分裂時に出現する特異的な構造であるが、この平板小嚢とゴルジ体由来小胞がどのように融合し、隔膜を形成していくのか、さらには膜融合過程に関連するタンパク質を探索することが本研究課題の目的である。本年度は褐藻類の細胞質分裂に見られる膜構造の変化を三次元レベルで理解するために、細胞質分裂が行われている褐藻エゾイシゲ接合子について急速凍結置換法で透過型電子顕微鏡用試料を作成し、その試料に対して電子線トモグラフィー解析を行った。より広範囲での三次元構造を再現するため、大阪大学超高圧電子顕微鏡センターにある最高加速電圧300KV(使用加速電圧300kV)、3000kV(使用加速電圧2000kV)の試料傾斜装置のついた透過型電子顕微鏡を用い、それぞれ300nm、1μmの切片に対し、±60°の範囲で連続傾斜画像を取得し、コロラド大学で開発されたIMOD softwareを用いて再構成の計算を行った。その結果、通常の透過型電子顕微鏡で認識されていた構造よりも複雑な膜構造と膜融合過程が存在していることが明らかになった。これらの成果に関しては、国内をはじめ国際学会で発表を行った。また、細胞質分裂期のヒバマタ接合子よりタンパク質を抽出し、アクチンフィラメントの働きをlatrunculin Bで阻害し、細胞質分裂の進行を抑制した際のヒバマタ接合子より抽出したタンパク質でそれぞれ2次元電気泳動を行い、発現に差異のあるスポットをBioRadのPD Questを用いて現在、解析を行っているところである。
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