研究概要 |
本年度は卵巣顆粒膜細胞で強く発現する3つの遺伝子座で同定した機能ゲノム領域の転写調節活性を引き続き検討した。まず、Amhr2遺伝子座において同定した2つの機能領域がin vivoでどのような活性を示すのかについて、昨年度作製したトランスジェニックマウスを用いて解析を行った。その結果、Amhr2のプロモーターは卵巣と精巣の他に肝臓でも活性を示したが、同定した2つの機能領域はこの肝臓におけるプロモーター活性を完全に抑制した。プロモーター自体の活性は低かったが、卵巣よりも精巣においてはるかに高いこともわかった。このことと昨年度の結果から、これら2つの機能領域はAmhr2を発現しない組織でプロモーター活性を抑制すると考えられ、卵巣における高い発現にはさらに別なメカニズム(機能領域の転写など、下記参照)があることも推測される。次に、Scd2遺伝子座については上流10-15kbに同定した5つの機能領域がin vivoでエンハンサー活性を示したものの、卵巣における高発現を説明できるものではなかった。そこで、他の機能領域をゲノム配列の種間比較やヒストンアセチル化パターンの解析から探したところ,Scd2遺伝子の約2kb上流とイントロン中に新たな機能領域を同定した。in vitroでの解析の結果、これらはいずれも顆粒膜細胞特異的にエンハンサー活性を示すことがわかった。最後に、POP遺伝子座についてはCpGアイランドが卵巣特異的にエンハンサーとしてはたらくことが示唆されたが、今年度はそれ以外の調節領域を探索した。クロマチン構造解析などの結果、POP遺伝子の約20kb上流と約4kb下流に新たな機能領域を同定した。興味深いことに、いずれの遺伝子座においても機能領域のいくつかが卵巣において高レベルで転写されていることもわかり、これがそれぞれの遺伝子の調節に関わることも示唆された。
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