腎臓は、主として老廃物の排泄と体内の水や電解質の恒常性維持という2つの機能を担う生存に不可欠な臓器である。しかし、一旦、腎機能が失われると水分や種々の毒性物質が蓄積し尿毒症や高カリウム血症などの深刻な病気を引き起こす。申請者は、脊椎動物の腎臓機能の普遍的メカニズムに迫ることを目的として、種々の機能はそのままで、哺乳類より腎臓構造が単純である両生類の前腎に着目し、(1)前腎ネフロンの単離、(2)前腎に発現する輸送体の同定、(3)病態腎発症メカニズムについて研究を進めた。21年度は、前腎ネフロンの単離を中心に行った。当初、固定した幼生個体から前腎ネフロンを単離することを考えていたが、前腎からの遺伝子の単離にはより新鮮な状態の組織が求められるため、個体が生存した状態で前腎を単離する方法を考案した。前腎に特異的に発現する遺伝子を指標としたトランスジェニックガエルを作製した。その結果、前腎ネフロンはGFP蛍光を発するので、生きたまま微細解剖を行うことができ容易に前腎を単離することに成功した。単離した前腎ネフロンからRNAを抽出し、現在、前腎に発現する遺伝子の探索を行っている。また、自然突然変異により腎臓に疾患をもつpcメダカと正常メダカを用いて、前腎および中腎の機能異常のメカニズムの解明に着手した。今後、これらの研究が進むことで、脊椎動物の腎臓機能の普遍的メカニズムが明らかになっていくと期待している。
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