腎臓は、主として老廃物の排泄と体内の水や電解質の恒常性維持という2つの機能を担う生存に不可欠な臓器である。しかし、一旦、腎機能が失われると水分や種々の毒性物質が蓄積し尿毒症や高カリウム血症などの深刻な病気を引き起こす。申請者は、脊椎動物の腎臓機能の普遍的メカニズムに迫ることを目的として、種々の機能はそのままで、哺乳類より腎臓構造が単純である両生類や魚類の前腎に注目し、(1)前腎ネフロンの単離、(2)前腎に発現する受容体および輸送体の同定、(3)病態腎発症メカニズムについての研究を行った。 前年度は、前腎ネフロンの単離を中心に行った。22年度は単離ネフロンに発現するホルモン受容体および輸送体の同定と局在について、さらにメダカ病態腎モデルを用いて病態腎発症メカニズムについて解析した。ヒトの多発性嚢胞腎症のメダカモデルと考えられるpc mutantと正常メダカの腎臓との間で発現量に差のある遺伝子をサブトラクション法により解析し、pc mutantで発現量が著しく減少する2遺伝子(バソトシンV2受容体とAQP8)を同定した。メダカV2受容体の腎臓での局在を免疫組織化学により調べたところ、遠位尿細管後部分節の基底側細胞膜に局在しており、嚢胞腎発症メダカではその発現が低かった。また、AQP8をノックアウトしたマウスでは、精巣の肥大が生じることが報告されていることから、pc mutantでのAQP8の消失が嚢胞を伴った腎臓の肥大と関連していることが考えられる。今後は両遺伝子と嚢胞腎発症との関連性について精査していく。
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