前年度に引き続き、鳥類のウズラの視床下部領域で産出される26RFaというRFamideペプチドに着目し研究を進めた。これまでに、ウズラの26RFaをコードする前駆体cDNAのクローニングと質量分析による成熟神経ペプチドの同定を行った。さらに、この成熟ペプチドに対する抗体を用いた免疫組織化学的解析とmRNA発現部位を解析するin situハイブリダイゼーション解析により、26RFaは視床下部の前視床下部核に特異的に合成されていることを明らかにした。哺乳類のラットやマウスでは26RFaは摂食行動に関与した神経ペプチドであることが知られている。そこで、本年度の研究では、26RFaをウズラと同じキジ目であるニワトリを用いて脳室内投与することにより、摂食行動へ及ぼす影響を解析した。ニワトリの品種には、ブロイラー(肉用鶏)とレイヤー(卵用鶏)を用いた。ブロイラーは摂食行動が亢進した品種である。これらの雛を用いて脳室内投与を行ったところ、26RFaはブロイラーの摂食量のみを有意に増加させる効果があった。また、C末端側8残基の合成ペプチドを作成し、同様に行動解析を行ったところ、成熟型の27残基ペプチドに比べ活性は弱いものの、有意に摂食量を促進させた。最後に、哺乳類で26RFaの受容体として同定されているGPR103のホモログ遺伝子をニワトリの脳からクローニングした。その後、HEK293T細胞にGPR103を発現させ、カルシウムイメージングを行った。この結果、26RFaがGPR103に結合することが明らかになった。本研究により鳥類の視床下部に存在する新規RFaペプチドが、その特異的な受容体であるGPR103を介して摂食行動の調節に関与することが示唆された。
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