研究概要 |
環形動物類のケヤリ(Sabellastarte indica)の生体内には高濃度で遊離D-アルギニンと,そのリン酸化合物である遊離D-アルギニンリン酸が存在している。また,D-アルギニン及びL-アルギニンを共に基質として利用し,D-アルギニンリン酸及びL-アルギニンリン酸を合成することのできる特異なアルギニンキナーゼが存在している。本研究では,無脊椎動物全般からアルギニンキナーゼ遺伝子を単離し,その進化的背景を明らかにすると共に,D-アルギニンを基質として利用できるアルギニンキナーゼがケヤリにのみ存在するのかどうかを確かめることを目的の一つとしている。 本年度は様々な海洋無脊椎動物の内,棘皮動物と刺胞動物に対象を絞って研究を進めた。棘皮動物門から3種類のウニ類,9種類のウミシダ類,刺胞動物門からネマトステライソギンチャクを選び,アルギニンキナーゼ遺伝子の単離を行った。その結果,3種のウミシダ類とネマトステライソギンチャクからアルギニンキナーゼ遺伝子を単離することに成功した。特に,ネマトステライソギンチャクからは,他に例を見ない3ドメイン構造を持つアルギニンキナーゼ遺伝子を単離した。さらに,これらのアルギニンキナーゼ遺伝子をpET30bベクターに組み込み,大腸菌肌BL21(DE3)株を用いたリコンビナントタンパク質発現系を構築した。現在は得られたリコンビナントタンパク質を用いた詳細な酵素活性の検討を行っており,これらがD-アルギニンに対して活性を持つかどうかの確認も進めている。
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