研究概要 |
・北海道でフィールドワークを行い,シカ寄生性シラミのサンプリングを行った.あわせて,各地の自治体,狩猟組合などとコンタクトをとり,シカ毛皮の収集を行った.前年度のサンプリングとあわせ,北海道,本州,四国,九州,対馬,屋久島,口永良部島のシカとシラミの両サンプルを収集した.さらに海外の研究者の協力も得て,台湾のシカハジラミのサンプルと,外群となるニホンジカ以外のシカ寄生性のシラミを得ることができた. ・前年度デザインしたCOIプライマーを用いて,シカとシカハジラミの系統関係を推定した.なお,シカとシカハジラミで完全に相同な領域を解析対象として選んだ.また,シカのサンプルは,実際にシラミが採集された個体となっていることから,ホスト-パラサイトの関係は完全に一対一で対応させることができた.解析の結果,シカは南北大きく二つのグループに分けられた.シカハジラミは大きく三つのグループに分けられた.シカとシカハジラミの系統関係は完全には一致しなかったが,統計的には有意な共進化関係が見られることが明らかとなった.また,シカハジラミの塩基置換速度は,シカのそれと比べ約6倍速いことも明らかとなった.これらの結果は,日本応用動物昆虫学会・日本昆虫学会共催支部大会において発表した. ・本研究の過程で得られたデータの一部を用いて,シラミ目の高次系統関係の推定を行った.研究成果は,Molecular Phylogenetics and Evolution誌およびArthropod Systematics and Evolution誌に発表した.また,系統推定の方法を検討する過程で得られた知見を基に論文を執筆し,これはSystematic Entomology誌に発表した.
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