近年、研究代表者らを含む複数の研究グループにより、寄生性原生生物であるパーキンサスに縮退した色素体が存在することが示された。本研究の目的は、この色素体の維持機構すなわちタンパク質輸送機構を明らかにし、これを既知の多様な色素体と比較して色素体維持の共通機構を探ることである。一般に色素体へのタンパク質輸送にはN末端の移行配列のプロセシングが関連しているため、形質転換体から輸送済みのタンパク質を単離してN末端配列解析を行う必要がある。これを容易に行うため、既報の形質転換系と同様のベクターに3種のタグペプチド(8xHis・SBP・c-myc)を備えたmfGFPを組み込んで発現させる系を確立した。すでに抗体を用いて色素体への局在が示されているispCタンパク質をmfGFP融合タンパク質として発現させたところ、免疫蛍光法と同様の蛍光像が得られたことから、この系では局在擾乱は起こっておらずそのまま解析に利用可能であることが示された。この形質転換株については、輸送済みタンパク質の単離に成功しており、N末端配列解析や免疫電子顕微鏡法による詳細な局在解析を進めている。一方で、今後多くの形質転換体を作製するにあたりより簡便な手法が望まれたので、カナマイシン耐性遺伝子を2aペプチドを介し接続して発現させ、抗生物質G418による薬剤選択を行う系を開発した。普遍的な局在マーカータンパク質(BiPやEF-Tu)に対する蛍光融合タンパク質を発現する組み替え体は作製途上であり、これが得られ次第色素体移行シグナルの改変に着手する予定である。
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