本研究で目的とした3点について、それぞれ記述する。 1) 西太平洋のスナギンチャク類の多様性の解明 小笠原、久米島、台湾での採集に加え、オーストラリア(Census of Marine Life中のCReefsプロジェクトの調査に参加)、コスタリカ、イラン、ケープ岬からも標本を得た。しかし、当初予定した北米(グアム、ハワイ)での採集は、新型インフルエンザによる渡航禁止令のため実施できなかった(ハワイでの採集は本年中に実施予定)。これらの結果に、準備中だったガラパゴス諸島産スナギンチャク類の調査報告を加えた、論文4編が受理され、1新属4新種を記載することができた。また、現在5編の論文がレビュー中である。2010年3月には南西諸島のスナギンチャク相調査を行ない、未記載種を含む200以上の標本を採集できた。これらの標本は現在解析中であるが、遺伝子解析については大部分が完了している。今年度には、国内(南西諸島、小笠原)、台湾、ケープ岬、それぞれのスナギンチャク相に関する論文を投稿予定である。 2) イワスナギンチャク類の生息状況に関する長期モニタリング 2009年春に観察地点を設定し、以降、適期的にモニタリングを実施している。モニタリングは2010年末まで実施予定で、その後解析を行なう予定である。 3) パリトキシンを含有する種の特定、およびその要因物質と合成過程の解明 周年を通じて採集したスナギンチャク類について、現在化学的な解析を行なっている。また、日本国内およびアメリカの研究者と共同で、パリトキシンを含有するスナギンチャク類の種を、DNAバーコーディングを用いて判別する試みを開始した。現在、この研究経過に関する論文を準備中である。 上記以外に、スナギンチャク類の同定と分類に関するワークショップを台湾とコスタリカで開催した。いずれも30名を超える参加者があった。
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