本研究で目的とした3点について、それぞれ記述する。 1.西太平洋のスナギンチャク類の多様性の解明 八重山諸島、沖縄本島、台湾での採集に加え、オーストラリア(Census of Marine Life中のCReefsプロジェクトの調査に参加)、大西洋、イラン、アフリカからも標本を得た。これらの結果として論文14編が受理され、2新種を記載することができた。このうちの1つは日本海溝(水深5600メートル)から得られた種で、スナギンチャク類の最深生息記録となった。2011年3月には沖縄島大浦湾のスナギンチャク相調査を行ない、未記載種を含む50以上の標本を採集できた。これらの標本は現在解析中であるが、遺伝子解析については大部分が完了している。現在、4編の論文がレビュー中である。 2.イワスナギンチャク類の生息状況に関する長期モニタリング 2009年春に観察地点を設定し、以降、適期的にモニタリングを実施している。モニタリングは2011年末まで実施予定で、その後解析を行なう予定である。 3.パリトキシンを含有する種の特定、およびその要因物質と合成過程の解明 周年採集により得られたイワスナギンチャク類について、化学的な分析を行なっている。日本国内およびアメリカの研究者と共同で、DNAバーコーディングを用いて、パリトキシンを含有するスナギンチャク類の種を同定する試みを開始し、この研究経過に関する論文が最近PLoS Oneに受理された。
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