研究課題
Parasitodiplogaster属に関して、その形態的多様性を再検討し、分類学的整理を行うこと、遺伝的距離と生態的、形態的多様性の関連を明らかにすることを目的として研究を行った。初年度は新規に採集されたParasitodiplogaster属,およびその類縁属の線虫に関して、口腔形態の観察を行い、これらを系統樹上に位置づけること、また、比較対照とするための他のDiplogastridae科の複数種に関して口腔形態と分子系統関係を解明することを目標とした。この結果、パナマにおいて採集した標本を観察、解析したところ、Parasitodiplogaster属内の一部の種には他の自由生活/捕食性線虫にみられる口腔形態の二型が確認された。口腔形態の二型化は自由生活者が環境要因の変動に適応するための形質であると考えられている。昆虫寄生線虫から構成されている同属がこのような形質を持つということにどのような意味があるのかが新たな疑問として提示された。もしくは、姉妹属であるKoerneria属が同様の口腔二型を持つことから、この形質は共通祖先からの痕跡的形質である可能性も残るが、生理、生態的にコストのかかるこの形質がこれらParasitodlplogaster属線虫の生活史上どのような役割を果たしているのかは興味深い課題である。また、中央アメリカとの比較対象に台湾、南西諸島、およびインドネシアで行った調査の過程で、中米のイチジク属からは検出されないRhabditidae科の線虫が検出された。同様の線虫グループが中国、オーストラリアからも検出されていることから中央アメリカとは独立に、西太平洋地域においてイチジク属、イチジクコバチ、Rhabditidae科の三者関係が発生している可能性が示された。さらに、過去にアフリカから得られたイチジク集合花関連線虫の標本を精査したところ、上記のいずれとも異なるDiplogastridae科の未記載属と見られる線虫が検出され、これらに関しては今後、詳細な調査が必要であると考えられた。イチジク属の集合花を利用する線虫群集の多様性が当初の予測よりはるかに高く、また、地域的にも複雑であることが示された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
Nematology
巻: 14(In press)(掲載確定)
Zoological Science
巻: 29(In press)(掲載確定)
Journal of Nematology
巻: 44(In press)(掲載確定)
巻: 13 ページ: 155-164