研究概要 |
野外調査:日本各地および海外(カメルーン、オーストラリア、スウェーデン、スペイン、中国、ニューカレドニア)で野外調査を行い、計約150点の関連属菌のサンプルを得た。日本国内のサンプルについては、特に小笠原諸島父島および母島より計44点のサンプルを採集した。日本国内から記載されているヒメツチグリ属菌のうち小笠原産の種は大半が固有種と考えられており、生物地理を考察するうえで重要なサンプルである。その他沖縄から13点のサンプルを採集した。同じ離島からのサンプルであるが、大陸島である沖縄と海洋島である小笠原の菌は起源が異なると考えられる。 海外調査ではカメルーンで30点の標本を得た。この中には日本に分布するものと共通種とされているものも多いが、DNAレベルでは明確に別種とすべきものも多く含まれていると考えられる。熱帯アフリカ産菌類と他地域の菌類の生物地理学的な関係については現在解析中である。ヨーロッパはタイプ産地が多く含まれることから、分類学的な考察をするうえで重要な地域である。今回の調査ではスウェーデンでTrichaster melanocephalusを9個体採集することができた。現在までのところ本種とヒメツチグリ属菌の関係については不明であり、本研究によって初めてDNAが解析されることになる。また、ニューカレドニアでは新種のSclerogaster属菌を採集した。新種記載については現在準備中である。 DNAデータ:上記で採集された標本全点からすでにDNAを抽出し、菌類のバーコーディングマーカーである核ITS領域の塩基配列を決定した。また、複数種について特にエリマキツチグリ近縁種を集中的にサンプリングし、核ITSのほか核LSU,SSU,RPB2,atp6の複数遺伝子の塩基配列で解析した結果、エリマキツチグリ様の形態を持つ種の非単系統性が示された。この結果は複数の学会にて発表した。
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