シアノバクテリアの共生能の実験的検証と系統進化の解明にむけ、以下の研究を行った: 1) 共生シアノバクテリアの単離と宿主植物の培養・共生実験系の確立 野外における共生種を実験材料とするため、シアノバクテリアを共生者とするコケ植物・被子植物からシアノバクテリアの単離を行い、無菌化した。また、多様な宿主植物との共生関係を検証する実験系を確立するため、コケ植物、被子植物を培養し、共生性・自由生活性Nostoc属シアノバクテリアとの共培養を行い共生能を確認した。なお、被子植物Gunneraでは培養が安定せず、十分な数の植物体を実験に供することができなかったため、条件の最適化が必要である。 2) シアノバクテリアの系統進化の解明と共生の分子機構の解析 シアノバクテリアの系統進化を明らかにするため、共生性・自由生活性の10株と1)で単離された株を材料に、ゲノムDNAを抽出し、16SrRNAおよび細胞分化制御遺伝子をPCRで増幅、クローニングし、塩基配列を決定した。得られた配列を遺伝子データベースから収集した既知配列と合わせ、近隣接合法、最節約法、最尤法で分子系統樹を作成した。一方で、共生に必須な分化細胞形成能を分子レベルで解析するため、上記のシアノバクテリア株を材料に、研究代表者らが同定した形態形成制御遺伝子の相同遺伝子のPCRによる増幅を試みた。相同遺伝子の存在が明らかになった株については塩基配列を決定し、既知配列との比較、保存部位の特定等を進めた。
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