研究課題
本年度は主にマウスから採取したリンパ球を用い、各種刺激時におけるlysoPS受容体・産生酵素の発現変動解析を行った。その結果、脾臓リンパ球においてリポポリサッカライドやコンカナバリンAなどのマイトージェン刺激後、約24時間でlysoPS産生酵素PS-PLA1の発現上昇が、120時間後をピークlysoPS受容体P2Y10の発現上昇が認められた。この刺激120時間後のリンパ球にlysoPSを処理すると、BrdUの取り込みで評価したリンパ球の活性化が抑制されることがわかった。さらにこの抑制はP2Y10ノックアウトマウス由来のリンパ球では消失したことから、刺激によって発現上昇したP2Y10を介して、lysoPSがリンパ球の活性化を抑制することが明らかとなった。また、GPR34たついては通常状態からリンパ球における発現が高く、刺激による大きな発現変動は認められなかった。これらの結果から、炎症初期にはPS-PLA1の発現上昇に伴うlysoPSの産生によりGPR34発現リンパ球が炎症局所に集積し、炎症後期には発現上昇したP2Y10を介してlysoPSによるリンパ球の活性化抑制が引き起こされる可能性が考えられ、lysoPSが炎症メディエーターとして多様な機能を有することが示唆された。さらに、lysoPSの量および分子種を解析するため、LC-MS/MSによるlysoPSの高感度検出系の確立を進行中であり、今後メディェーター本体の動向を調べていくことにより、その位置づけがより明確になるものと考えている。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J Med Chem. 52
ページ: 5837-5863