研究課題
これまでに、リゾホスファチジルセリン(LysoPS)がヒト自己免疫性肝炎モデルであるコンカナバリンA(Con A)誘発性肝炎マウスにおいて、発症を抑制することを明らかにした。本年度は、それに関与するLysoPS受容体を解析するために、LysoPS受容体KOマウスにCon A肝炎を誘導した。その結果、P2Y10 KOマウスは血中ALT値の上昇および肝臓ネクローシスの増加など、野生型マウスに比べて症状が悪化することがわかった。よって、Con A肝炎の発症にはP2Y10が関与することが明らかとなった。また、この結果は内在性のLysoPSが症状抑制効果を有することを示唆している。そこで、Con A肝炎におけるLysoPSレベルを解析した。これまでに確立したLC-MS/MSを用いた高感度定量系を用いて、血中LysoPSレベルを測定したところ、Con A投与数時間後から12時間後をピークに顕著に上昇することがわかった。さらに、LysoPS産生酵素PS-PLA1についても、Con A肝炎時に血中レベルが上昇することおよび肝臓におけるmRNA量の増加が認められた。これらの結果から、発現上昇したPS-PLA1によって産生されたLysoPSがP2Y10を介してConA肝炎の症状を抑制していることが示唆された。また、in vitroにおいてLysoPSがマウス脾臓細胞のConA刺激による凝集反応を抑制することを見出した。この凝集反応は接着分子LFA-1を介したものであり、実際抗LFA-1抗体により抑制されることを確認している。さらに、このリンパ球の凝集抑制効果はP2Y10 KOマウス由来の細胞では認められなかったことから、LysoPSはP2Y10を介してLFA-1の関与する細胞接着を制御していることが示唆された。
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J Biochem
巻: (In press)(未定)
10.1093/jb/mvs011
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