研究概要 |
自然免疫は病原体の侵入を認識し、炎症などの免疫応答誘導や獲得免疫系の活性化を誘導する。細胞は病原体の持つ特有の構造を認識するパターン認識受容体を細胞上に発現させて、常に病原体侵入を監視している。パターン認識受容体の1種であるToll様受容体4(TLR4)はグラム陰性菌の細胞外膜主要構成因子であるリポ多糖(LPS)を認識する。LPSはエンドトキシンともよばれ、過度のLPS応答は敗血症を引き起こし重篤な場合は死にいたる。LPSによってTLR4はサイトカイン、ケモカイン誘導とIFN産生、IFN誘導遺伝子の発現の2つの経路を活性化する。これらの経路はLPS結合により活性化されたTLR4の細胞内ドメインに結合するアダプター蛋白質により制御されている。そこで、本申請課題ではTLR4がLPSと結合し、細胞内ドメインが活性化されるメカニズムを立体構造から解明することを目的に、TLR4全長体のアゴニスト結合、非結合型のX線結晶構造決定に向けた研究を行った。研究開始21年度に昆虫細胞を用いた発現系で、TLR4の発現を確認した。細胞当たりの発現量は少ないながらも結晶化を行うには足る量であった。簡易精製を進め、60%程度の純度での精製条件を確立した。しかしながら、発現蛋白質の多くが昆虫細胞膜上にとどまり、可溶化が効率よく行えないという問題が明らかとなった。22年度には可溶化方法の検討を主に研究を展開し現在,調製量、純度の向上の改善に向けた研究を行っている。
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