真核生物に広く存在するボルト(vault)は3種類の蛋白質と1種類のRNAによって構成されており、分子量約1000万でサイズが約40×70nmという今日までに報告されている中では最大のRNA-蛋白質複合体である。このボルトの生体内での機能は未だに明らかとなっていない。我々の先行研究で決定した3.5A分解能でのボルトの外殻構造は、脂質ラフトに局在する膜タンパク質であるstomatinに高い相同性を示し、それは自然免疫に関与するという報告と一致するものであった。本研究はボルトが脂質ラフトの主成分であるコレステロールと結合するのか、そしてそれはMVPのどの部分かを決定したい。平成21年度において、ネイティブ結晶へのコレステロールの浸潤により、ネイティブデータと同型性の高いデータを8A分解能で収集し、ネイティブデータとのD合成により、ネイティブ構造にはない余剰の電子密度マップを観察した。それはボルトの外殻を形成するサブユニットMVPのショルダードメインに存在する疎水性のポケット内に存在した。この余剰の電子密度マップはコレステロールであると思われるが、測定したデータの分解能が低く、構造の決定には至らなかった。現在、コレステロールに臭素を結合させることで、その電子密度マップをラベルすることを検討している。コレステロール結合型ボルトの構造が明らかになれば、脂質ラフトとボルトの相互作用の分子メカニズムの解明に大きく寄与するものと期待できる
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