研究概要 |
細胞極性の形成過程において,LGNとそのパートナー分子(Gαi, Inscuteable(Insc),NuMA)からなる複合体が重要な役割を果たしていることが遺伝学的・細胞生物学的解析から明らかになってきた.また,その複合体を構成するLGNが分子スイッチとして機能している可能性が示唆されている.本研究では,LGNとそのパートナー分子複合体について,立体構造に基づいて細胞の極性形成の作用機序を解明することを目的とし,(1) LGN-Insc複合体の分子認識を立体構造に基づいて明らかにすること,(2) LGNについて物理化学的な解析と立体構造解析に基づき多段階の制御機構を明らかにすること,(3) 立体構造で得られた知見に基づいて変異体を作成し,細胞の極性形成に対する効果を検討することの3項目の解析を目指している.当該年度は,LGNおよびパートナー分子Inscuetable(Insc)について,立体構造解析を行うための試料調製など生化学実験に重点を置いて研究を進めた.LGNについて各種プロテアーゼに対する分解耐性を指標にドメインマッピングを行った.GST pull-down assayによりLGNとInscとの相互作用を検討しながら,LGNのInsc結合領域を含む領域,InscのLGN結合領域を含む領域についてタンパク質領域の至適化を行い,大腸菌を用いた大量発現・精製系を確立した.また,得られたInscのLGN結合領域についてNMRとCDを用いてキャラクタリゼーションを行ったところ,単独では一定の3次構造を持たなことが示唆された.以上,LGN単体,およびInscのLGN結合領域との複合体の立体構造解析を行うための基盤を確立することができた.現在,LGN単体,LGN-lnsc複合体について結晶化のスクリーニングを行い,結晶化条件の精密化を行っている.
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