本研究では、脂質ラフトに局在する膜タンパク質ストマチンまたはフロチリンによる膜小胞形成機構を解明するため、それらのコアドメインの三次元構造をX線結晶構造解析により明らかにすることをめざした。昨年度調製したヒトのストマチンとフロチリンの全長プラスミド、およびそれらの膜貫通部位などを除いたコアドメインのプラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)CodonPlusRIL株を形質転換し、組換え大腸菌からの目的タンパク質の発現を誘導後、His Bindクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行った。 昨年度、ストマチンとフロチリンのコアドメインについては目的タンパク質の発現が確認されたものの、大腸菌を超音波破砕後にほとんどが遠心沈殿画分となったため可溶性画分を大量に得ることができなかった。本年度は、1-2 M urea処理した後透析によりurea濃度を段階的に下げることで精製を行うことができたためそのサンプルを用いてシッティングドロップ蒸気拡散法により結晶化条件の探索を行ったが結晶は得られなかった。そこで大腸菌の培養条件(温度、誘導試薬の濃度)を種々検討、さらに異なるコアドメインを設計して発現15度の低温で誘導可能なプラスミドを用いた発現、などを試みたもののいずれの場合も可溶性画分を大量に得ることはできなかった。そこで新たに目的タンパク質の可溶性を高めるため融合タンパク質による発現系の調製を試み、ストマチンとフロチリンのアミノ末側にマルトース結合タンパク質を付加させたプラスミドを作製しその大腸菌でのタンパク質発現を試みている。これにより可溶性画分を安定して得ることができれば、結晶化条件の探索を行い、構造解析に取り組むことが可能になると考えられる。
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