研究概要 |
粗面小胞体ではリボソームとタンパク質膜透過チャネル(トランスロコン)が直接結合し、翻訳と共役した形でタンパク質の膜透過及び膜組み込みが行われる。透過中のポリペプチド鎖上に高い疎水性の配列が現れると、トランスロコンで停止し脂質環境へと横方向に分配されて膜貫通配列となる。一方、比較的疎水性の低い配列であってもその下流に正荷電アミノ酸残基を配置することで膜透過停止するが、低疎水性配列の60残基下流の正電荷配列が膜透過停止に寄与できること、またこの場合低疎水性配列は一過的に小胞体内腔へと透過するが、下流の正電荷配列によって膜内への逆戻りが誘導されることが示唆された。トランスロコンにおけるポリペプチド鎖の動きや各配列の認識機構に示唆を与える発見である。(Fujita et al, MBoC, 21,2045-2056,2010) また、上述の低疎水性配列の小胞体内腔への到達は、低疎水性配列付近に導入したアスパラギン結合型糖鎖付加モチーフへの糖鎖付加により検出したが、この糖鎖付加により膜透過停止が著しく阻害された。このことは、糖鎖が立体的障害となり低疎水性配列の膜内への逆戻りを阻害することを示唆している。タンパク質の膜透過及び膜透過停止が糖鎖付加によっても制御される可能性が示された。(Yamagishi et al, JB, in press) トランスロコン関連因子Sec62、Sec63については、免疫沈降を利用した共回収実験よりカルネキシン、BiP、リボフォリンI、LRRC59、VAPA、PGRMC1との相互作用が示唆された。また、RNA干渉によりHeLa細胞内のSec62またはSec63の発現を低下させたところ、用いたモデル基質の膜透過及び膜組み込みへの影響は見られなかったが、小胞体の形態変化は引き起こされたことから、膜透過以外で小胞体機能に関与する可能性が示された。
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