本研究計画の遂行に必要な、EGFR、PDGFRα、PDGFRβ、IR、caveolin-1(Cav1)および上述の成長因子受容体との結合ドメインを不活化させたCav1変異体のCav1^<F92A/V94A>について蛍光標識タンパク質発現ベクターを作製した。具体的には上記5分子のsEGFP(EGFPより発現が安定かつ蛍光強度が高い)とmCherryの融合ベクターの作製に成功し、それぞれCHO-K1細胞に一過性発現させて蛍光発色を確認した。また、成長因子刺激により作製した融合タンパク質が生理活性の機能を有することを確認した。平成22年度に計画していたMEF(-/-)由来不死化細胞に再導入したレスキュー細胞の作製が予定より早く進行したので、細胞株の糖脂質解析を行った。その結果、レスキュー細胞はガングリオシドGM3を主に発現していることが確認されたことから、SAT-I遺伝子組換えアデノウイルス感染系とともに、糖脂質の組成変化に対する膜受容体の挙動解析を用いる有用なツールの獲得に成功したといえる。続いて、先行実験としてMEF(-/-)由来不死化細胞とMEF(+/-)由来不死化細胞にIR-sEGFPを一過性発現させ、IRの側方拡散をFRAP法により解析したところ、予想通りMEF(+/-)由来不死化細胞においてIRの動的比率が向上していた。また、動的分子中の成分比ならびに各々の拡散速度をFRAP蛍光回復曲線のカーブフィッティングにより算出した。IRについてはさらに詳細に検討をしていくために、sEGFPおよびIR-sEGFPの安定発現株作製をHeLa細胞にて実施し、これに成功した。
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