研究概要 |
ips細胞誘導因子の1つである転写因子Sox2のDNA認識機構を分子の動きの面から明らかにするべく、本年度は、遊離状態のSox2が元々どのような運動性を示すのかについて集中的に解析を行った。まずは大腸菌発現系を用いて、NMR測定用に安定同位体標識したSox2の大量発現系の構築を行った。初めは、フレキシブルな蛋白質の発現に定評のあるGB1タグを用いてGB1融合蛋白としてSox2の大量発現を目指したが、GBl切断における副反応が多く、あまり収量よくSox2を調整できなかった。そこで次にタグなしで発現・精製の条件検討を行ったところ、IPTGによる発現誘導後に25℃で1晩培養し、陽イオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラム等で精製することにより、収率よくSox2を調製できることが分かった。そこでこの系で[^<13>C,^<15>N]-Sox2を大量に調整し、まずは各種3次元NMR測定を行いSox2のペプチド主鎖のNMRシグナル帰属の帰属を行った。得られた化学シフトの解析から、二次構造解析を行ったところ、Sox2は遊離状態でも結合状態とほぼ同じ領域に3本のαヘリックスを持っていることが分かった。次に、遊離Sox2の揺らぎをを解析するために、[^<2>H,^<15>N]-Sox2を調整し、600MHzと750MHzのNMRを用いて緩和分散実験を実施した。得られた緩和分散曲線を解析した結果、Sox2の第1ヘリックスおよび(DNA結合型構造で)それとコンタクトしている他のヘリックスの領域が、特定の構造間で大きく揺らいでいることが分かった。
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