研究概要 |
本研究では,DNA組換え反応の分子機構を解明することを目的として,組換え反応を触媒するRAD52に着目し,RAD52がどのようなメカニズムで一本鎖DNAと二本鎖DNAの間の相同な領域を検索するのかを,RAD52・DNA複合体のX線結晶構造解析により明らかにすることを目指している.申請者は,既知の調製方法でRAD52と一本鎖DNAとの複合体の結晶化に成功しているが,結晶構造解析が困難であることがこれまでの研究から分かった.その原因として,既知の方法で調製したRAD52が形成する多量体リング構造はDNAと安定に結合しないことが考えられた. そこで平成21年度では,まずRAD52が,申請者らによって明らかにされた11量体リング構造以外の多量体構造を形成する可能性を検証するために,複数のRAD52分子をタンデムに融合したコンストラクトを構築し,その会合状態を調べた.申請者は,2~4分子のRAD52分子を繋いだコンストラクトの大量調製に成功した.方法としては,RAD52の遺伝子の末端に,水溶性のアミノ酸を連結したリンカーをコードする塩基配列および制限酵素認識配列をPCRで付加し,RAD52の遺伝子同士をタンデムに繋いだ.そして,繋がったRAD52遺伝子は一本のポリペプチドとして大腸菌内で大量発現させ,種々のカラムクロマトグラフィーにより大量精製を行った。興味深いことに,大量精製したコンストラクトは,リンカーで繋いでいないRAD52と同様に多量体を形成することが分かり,ゲルろ過カラムクロマトグラフィーで解析した結果,これまでに見たことのないRAD52リングであることが考えられた.またRAD52がリングではなく,C型構造を形成する可能性を検証するために連結したRAD52ポリペプチド同士が会合しないような点変異を導入したコンストラクトも調製した.
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