研究概要 |
本研究は,DNA組換え反応の分子機構を解明することを目的とする.申請者は組換え反応を触媒するRAD52に着目し,RAD52がどのようなメカニズムでDNA間の相同な領域を検索するのかを,RAD52・DNA複合体のX線結晶構造解析により明らかにすることを目指した.申請者は,既にRAD52と一本鎖DNAとの複合体の結晶化に成功していたが,結晶構造解析に耐えうる良質な結晶ではないことがこれまでの研究で分かっていた.その原因として,RAD52と一本鎖DNAとの複合体が安定ではないことや,複合体が安定なcrystal contactを形成しないことなどが考えられた. そこで平成22年度は,結晶構造解析に耐えうる良質な結晶を調製するために,一本鎖DNAの配列に着目した.RAD52がDNA末端に優先的に結合することが報告されていることから,一本鎖DNAの末端付近の塩基配列を変えてみた結果,プリン残基を多く含んだ配列にすると構造解析に耐えうる良質な結晶が得られることが分かった.SPring-8放射光施設でX線回折データを収集し,最終的に3.0Å分解能で分子置換法による構造決定に成功した.興味深いことに,一本鎖DNAはDNA結合部位と予測されていたRAD52リングの外周に存在する塩基性の溝の中には結合せず,溝の入り口付近に結合していたこの領域には,我々が以前アラニンスキャン変異導入法によって同定したDNA結合に重要なアミノ酸残基が存在する.従って,今回の結晶構造と生化学的解析結果が一致することが確認された.一本鎖DNAは,特徴的ならせん構造を形成し,塩基が周期的にむき出しになっていることから,DNAの相同検索および対合反応に適した構造であることが考えられた.今回の構造をもとに,RAD52が触媒する一本鎖DNA同士のアニーリング反応の詳細なメカニズムを提案することができた.
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