研究概要 |
私は以前、PC12細胞を用いた研究によって、細胞内エンドサイトーシス輸送を障害させると、エンドソーム内にガングリオシドGM1(GM1)が蓄積し、エクソソーム(エンドソーム由来の細胞外小砲)放出が亢進すること、さらに、このエクソソームに結合しているガングリオシドが合成アミロイドβ蛋白質(Aβ)重合能を有することを見出した(Yuyama et al, J.Neurochem., 105, 217-24, 2008)。Aβ重合は、現在のところ有効な治療法がないアルツハイマー病(AD)の主要病理であり、その誘導メカニズムの解明が待たれている。今年度に実施した研究では、株細胞と比較して生体内神経細胞に近い性質をもつマウス初代培養神経細胞を調整し、エクソソーム放出の有無を検討した。ショ糖密度勾配遠心を用いた実験では培養液中の膜画分が、これまで報告されているエクソソームと同等の密度画分から回収されることを確認した。また、この画分ではエクソソームマーカータンパク質(Alix、Tsg101)が検出され初代培養神経細胞が正常状態でエクソソームを放出することがわかった。またこのエクソソーム画分からはAβ重合に関与するとされるGM1も検出された。また、この神経細胞からのエクソソーム放出はエンドサイトーシス阻害下(塩基性薬剤クロロキン処理下)で促進されることが明らかになった。上記の神経細胞から分泌されたエクソソームは、細胞外でのAβ重合に影響を与える可能性があり、来年度に行う解析によりそのことを明らかにし、アルツハイマー病の病態形成メカニズムについて考察したい。
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