本研究の目的は、未だ謎の多いオートファゴソーム形成機構について、脂質の観点から、特にスフィンゴ脂質の観点から切り込む事である。 今年度は、スフィンゴ脂質がオートファジーの進行に関与するかどうかを調べ、関与するならばどの素過程に関わるかを調べる計画であった。 実際に研究を行った結果、スフィンゴ脂質の合成がオートファジーの正常な進行に必要である事を明らかにした。この事実はこれまでに報告が無く、オートファジーの研究に於いて新たな視点を確立したと言える。そこでオートファジーの各素過程の進行を調べた結果、オートファゴソーム形成に必須な2つのユビキチン様結合反応系は、スフィンゴ脂質合成停止状態でも正常に起こる事が分かった。また、オートファジー関連タンパク質が集合するPASと呼ばれる構造の形成も正常であることが分かった。スフィンゴ脂質合成は、これらの素過程以外の部分で機能すると思われる。 また、オートファジー誘導条件でのスフィンゴ脂質代謝を放射線標識により追跡した。その結果、オートファジー誘導時にセラミドのうちある特定のタイプが蓄積している事が分かった。このタイプのセラミドは通常はマイナーな分子種であり、オートファジー誘導時に特徴的に増加する事が分かった。オートファジーと特定の脂質分子種の関連性を示唆する興味深い結果である。 ここまでの内容を、脂質生化学会で口頭発表した。 今後は、これらの発見をより掘り下げ、オートファゴソーム形成機構に迫る予定である。
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