研究概要 |
細胞質でリボソームによって新しく合成されたタンパク質の多くは膜を超えて輸送されたり,膜へと組込まれたりしてその役割を果たす。このようなタンパク質の膜透過・膜組込みの仕組みはすべての生物に保存された必須の生命現象であり,膜透過・膜組み込み装置の中心部は膜タンパク質Secトランスロコンからなる複合体から構成される。この現象を詳しく知る為には,Secトランスロコン複合体の構成因子の立体構造の情報が必要である。本年度は,細菌由来SecYEG複合体(Secトランスロコン)とSecDF(Secトランスロコン関連膜タンパク質)の構造をX線結晶構造解析によって明らかとすべく,研究を進めた。SecYEGの解析では高い純度で精製する系を確立し,SecYEGの結晶を得た。大型放射光施設SPring-8でのX線回折データの収集を進めており,これまでの報告を越える高分解能(3A分解能以上)での構造決定を目指している。SecDFの解析においては,3.5A分解能のX線回折データを基に,SecDFの構造の精密化を進め,未だ報告のないSecDFの詳細構造をはじめて明らかとした。この構造と,構造情報に基づく生化学的解析から,「SecDFはプロトン駆動力(proton-motive force)によってダイナミックな構造変化を繰り返しながら,ペリプラズム側で膜透過基質タンパク質と相互作用し,膜透過の高効率化に寄与する膜内在性シャペロンである」とのモデルを提唱した。次年度においても引き続き,上記の研究内容を進め,タンパク質の膜透過・膜組み込み機構を解明していく。
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